木が暴れると収拾がつかなくなる
植木屋の間では「あの庭木、暴れちゃってるな」などのように、「木が暴れる」という言い方をすることがあります。「木が暴れる」・・・どんな姿を想像するでしょうか?風にあおられた枝や葉が激しく揺れている・・・というわけではありません。以前のコラム「どの枝から切るべきか?剪定に迷ったらまずは不要枝」で不要枝について述べましたよね?その不要枝のひとつである徒長枝が伸び放題になった状態で、ひどくなると枝が横向きや下向きにまで伸びて、大きく樹形を乱してしまいます。収拾がつかなくなったように見えるその木の状態は、まさしく「暴れた」状態で、庭木を見て癒さるというよりは、ただ木のもつ生命力に感服するといった気持ちにさせられます。
しかし、おもしろい発想を持ったお客様もいるもので、そんな木が暴れた状態を利用して、「ハロウィンの飾り付けとかしたら雰囲気でるよね?」と冗談まじりでおっしゃった方がいました。それほどに木が暴れた状態は不格好で、見方によっては少々不気味でもあるということです。
剪定を失敗!?木が暴れる原因
「木が暴れる」状態がどうしてできてしまうかというと、木を低くしようとして幹や枝をバッサリと一気に短く切ってしまうことが主な原因です。庭木の剪定で、これがもっとも失敗する切り方といっていいと思うのですが、このような切り方は木に強い刺激を与えます。
木はもとの大きさに戻ろうと反発して、徒長枝をたくさん伸ばしてしまうのです。以前、剪定のコツを「思い切って大胆に」とは言いましたが、それはハサミを入れる時の心がけであって、雑に切ることとは違います。暴れた木を見かねて、再び枝をまとめて切るようなことをすると、切り口からさらに多くの徒長枝が伸びるといった悪循環にはまってしまいます。
剪定に失敗した木は修正できる
このような剪定の失敗で、悪循環にはまってしまった庭木はどうすればいいのでしょうか。この場合、木に強い刺激を与えたことが失敗の原因です。木に強い刺激を与えないように数年かけて少しずつ小さくしてくことを前提とし、まずは乱れてしまった樹形を整えることから始めます。そのためには枝を途中で切る切り戻し剪定でなく、「切り替える」剪定をおこない、伸びようとする力の行き場を確保してあげることが大事です。
切り替え剪定は、枝分かれしている箇所で伸ばしたい方向の枝を決めたら、それ以外の枝を切って伸びる方向を替えてあげる剪定です。木の幹となる芯を決め、切り替え剪定と不要枝を切ることで、樹木全体のバランスを整えていくのです。
これを何年か繰り返していくことになりますが、ある程度イメージして行う必要があります。ビジョンのないまま行うとさらに失敗するおそれもありますから、自信のない方は専門家に依頼したほうが無難かもしれません。 木が暴れるのは、予備知識なくいきなり剪定をやろうとする方が陥りやすい失敗です。
木を暴れさせないためには定期的な剪定が必要だということが、よくおわかりになったのではないでしょうか。年に一、二回くらいの定期的な剪定をすれば木への負担も少なくてすみますし、美しい庭の維持につながります。
剪定で失敗したかな?と思ったときは強引なことはせず、まずは専門家に尋ねてみてください。失敗に学ぶ姿勢があれば、きっとよいアドバイスがもらえ、今後に生かせると思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。