樹木を育てることはプラスの感情をもたらす
前回のコラム「植木屋さんは健康体?庭いじりのススメ」で、緑と触れあう庭いじりが心身の健康によい効果をもたらすと述べました。実際「園芸療法」という言葉があるのですが、これは庭木や草花・果樹といった植物を育てる体験を通して、心身の機能を改善するという療法です。植物を世話して育てる中で「自分の手で育てている」という自信や自尊心が生まれ、生長を待ちわびる期待感も伴います。そして花を開かせたとき、実をつけたときは、きっと喜びや満足感を感じることができ、私たちに多くのプラス感情をもたらしてくれるのでしょう。特に庭木の場合、美しく育てるためには剪定が必要になりますが、それには樹木の性質や特性をよく知っておくことが大切です。樹木の性質を知れば、自分での剪定も判断がしやすくなりますし、剪定した枝がどんな伸び方をするのか、どんな庭をつくり出していくのかというように、庭を見る楽しみが何倍にもなっていくでしょう。
知っておくといい樹木の性質
樹木はどのように育ち、どのように枝を伸ばしていくのか。多くの樹木は共通した性質をもっています。これらを知っておくと、剪定をするときどの枝を切るのか、どの枝を残すのかといった判断の目安にすることができます。■太陽に向かって枝葉を伸ばす
多くの植物がそうであるように、樹木も太陽に向かって枝を伸ばしていきます。ですから日のよく当たる部分の枝がよく伸びることで、樹形がいびつになってしまうのです。また枝が密生してくると内部に日光が届かなくなり、内側の枝が枯れてしまうこともあります。剪定によって樹形のバランスをとり、日光が均等にあたるようにしてあげます。
■上向きの枝は強く伸びる
樹木には上方向に伸びる枝と横方向に伸びる枝があるのですが、上向きの枝は勢いよく伸びる傾向があります。放置しておくと丈が高くなりすぎたり、不格好になってきてしまいます。上向きの枝は剪定して、なるべく横方向に枝を伸ばすようにしてあげます。
■先端に近い芽ほど強く伸びる
枝の先端についた芽(頂芽=ちょうが)は、枝の途中につく芽(わき芽)より生長が強く速いという性質があります。逆に先端の芽を切り取ると、すぐ下の芽が急に生長を始めるので、この性質を利用して主枝を切り替えたり、伸びを抑えたりすることがあります。
■枝数が多いほど伸びも速く幹も太くなる
枝数が多いということは、葉も多くなります。そうなるとよりたくさんの栄養分が作られるので、必然的に勢いよく生長し、幹も太くなってしまいます。剪定で枝数を減らし、伸びる勢いを均一にすることが大切です。
■枝分かれの少ない枝のほうが伸びは強い
元の太さが同じ枝をくらべた場合、枝分かれの少ない枝のほうがよく伸びます。栄養分がそこに集中するためですが、それに対して、枝分かれの多い枝は養分が分散されるので強く伸びません。伸びを抑えるためには、枝分かれの少ない枝を剪定し、枝分かれの多い枝を残すようにします。
簡単にではありますが、樹木は以上のような性質を持っています。剪定によって残した枝がどんなふうに伸びるのかを見るのは、成長を見守るような気持ちになりますし、剪定に慣れてくるとイメージした樹形づくりができるようになってくるでしょう。
日々庭を眺めることができ、移り変わりを見ることができるのは、庭のオーナーであるお客様自身です。樹木の性質を理解していくと、庭に深い関心と愛着が芽生えるかもしれませんよ。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。